【日本・歴史】財閥の変遷 ~戦国時代から現在まで~

戦国・江戸前期 豪商の隆盛と没落

室町時代以降の商業の発展もあり、織田信長・豊臣秀吉の時代から多くの豪商が現れるようになった。これらの豪商はしばしば時の権力者と結びつき、政商としても大きく活躍した。
この頃の豪商は時勢に乗って1代で大きく儲けるというパターンが多く、後継者の資質や時代の変化、権力者のとの関係性や奢侈などによって早くに没落するものが多かった。
このような流れは江戸・元禄時代のあたりまで続き、中には将軍家や大名家と結びつき安定した商家も現れてきていたが、江戸中期以降に武家の財政難が深刻化し、それらの商家もそのほとんどが豪商としては生き残れなかった。

この頃の豪商として今井宗久、角倉了以、茶屋四郎次郎、淀屋常安、紀伊国屋文左衛門などが有名。

江戸後期 倹約商人による富の蓄積

江戸中期以降、それまでとは変わって堅実な経営で財を成した豪商が現れる。これらの家は家訓として倹約を旨にし、商売を家業に数代に渡って富を蓄積し江戸時代を通して大きく反映した。
財閥とは基本的に近代以降の持株会社によるものを指すが、こうした継続的に発展した江戸の豪商を財閥としてとらえる見方もある。

鴻池家:大阪の商家。酒造業からはじまりさらに海運業、両替商として大きく発展する。
その後次第に金融業に専念し、幕府にまで大きな影響力を持った。江戸時代最大の財閥ともいわれる。

住友家:大阪の商家。元武士の住友政友が京で事業をはじめ、子孫たちが多方面に商売を拡大した。
特に銅の精錬と両替商が軸となり、鉱業と金融業に大きな力を持った。

三井家:江戸の商家。伊勢松坂から出た三井高利が呉服商人として大きな財を得たことがはじまり。
「現金掛け値なし」等世界的にも先進的だった商売手法を編み出したことでも有名。

明治・戦前 近代化と財閥の形成

明治維新以降、西洋の株式会社の手法が入ってきたことにより複数の財閥が成立するようになった。
そのうち特に権勢を誇った3つないし、4つの会社を三大財閥四大財閥と称する。
三井、住友は江戸からの発展を引き継ぐ形で財閥化し、幕末から明治初期に成立した三菱、安田は政府と深い関係を結ぶことで大きく飛躍した。これに対し鴻池財閥は事業の多角化を図らなかった為にこれら四大財閥に後れを取ることとなったが、その知名度から多くの企業の成立に関わった。
また、これらと並ぶものとして渋沢栄一の関連会社群を渋沢財閥とすることがあるが、関連会社間の関係は他の財閥に比べて薄く、財閥とはみなさないことも多い。

三菱財閥:土佐藩士出身の岩崎弥太郎が創設し、政府の保護の元で海運業で巨利を得る。
事業は拡大し三井に劣らぬ大勢力を築く。岩崎一族の力が強く独裁政治、組織の三菱と称された。

三井財閥:三井家は明治以降の情勢にもうまく対応し、戦前最大の財閥に成長していった。
経営における三井一族の影は薄まり優れた個人が手腕を振るう番頭政治、人の三井と称された。

住友財閥:明治維新に際して大きな危機を迎えたが、それを教訓に近代的な経営方針に舵を取った。
その理念を住友家法として制定し、それに則った経営で法治主義、結集の住友と称された。

安田財閥:四大財閥とする場合上記3財閥と並び称される。幕末奉公人だった安田善次郎が時代の荒波の中で金融事業に成功し、巨利を得たことがはじまり。金融部門では戦前追随を許さぬ最大勢力だった。

この他にも大正時代の経済の発展もあって多くの財閥が成立した。特に大戦景気で急速に富を築いた資本家は成金と言われたが、急速な発展だけあってすぐに没落したものも多かった。特に当時の大企業、鈴木商店の倒産は昭和金融恐慌の引き金となり、日本における第二次世界大戦の遠因となった。
戦後にGHQの指定した十大財閥には四大財閥の他に鮎川財閥(久原財閥)、浅野財閥、古河財閥、大倉財閥、中島財閥、野村財閥が含まれている。

戦後・昭和 財閥解体と都市銀行

戦後GHQによる財閥解体によって、そのまでの財閥とは異なる経営システムが成立した。
旧四大財閥は、戦前の鴻池財閥や渋沢財閥のような緩やかな連帯に転換していった。
その連帯の軸となったのがそれぞれが抱える都市銀行であり、金融系列による企業集団を形成した。
これらは6大グループと呼ばれ、戦前の他の財閥も多くがこの6大グループに組み込まれ再編された。
イメージの参考として各グループに属した電気系や自動車系の企業名を併記した。
(ただし取引銀行として繋がっているだけで経営的には疎遠な場合もあった)

三菱グループ(金曜会):旧三菱財閥系。三菱銀行を中核に結成された。
グループ内の結束は強く、組織の三菱は引き継がれた。三菱自動車、三菱電機を抱えた。

住友グループ(白水会):旧住友財閥系。住友銀行を中核に結成された。
東洋工業(現マツダ)、松下電器工業(現パナソニック)、日本電気(NEC)を抱えた。

三井グループ(二木会):旧三井財閥系。三井銀行を中核に結成された。
三菱、住友に再結集、重化学工業化で遅れ、相対的に地位が低下した。トヨタ自動車、東芝を抱えた。

芙蓉グループ(芙蓉会):旧安田財閥系。富士銀行を中核に結成された。
都市銀行最大手だったが、三菱、住友に迫られたことで融資系列を結集した。日産自動車を抱えた。

三和グループ(三水会):旧鴻池財閥系。三和銀行を中核に結成された。
芙蓉グループの後を追う形で結集していった。シャープ、ダイハツ工業を抱えた。

第一勧銀グループ(三金会):旧渋沢財閥系。第一銀行(第一勧業銀行)を中核に結成された。
渋沢栄一が関わっていた古河財閥や神戸川崎財閥と系列化して誕生。いすゞ自動車、富士通を抱えた。

平成・バブル以降 メガバンクとIT化

戦後しばらく、6大グループの中核となった銀行も含め、都銀13行・大手20行と呼ばれた安定的な金融界の情勢が続いていた。しかしバブル崩壊とIT化の波の中で1990年代後半から2000年代前半にかけて主要銀行の統合が進み、3つのメガバンクの中核である銀行にりそな銀行・埼玉りそな銀行を加えた4行(埼玉りそなを別に数えた場合は5行)にまで都市銀行は減少した。これにより旧来の6大グループ体制は崩壊し、グループ内の企業のつながりは弱まり、各企業の独立性が高まった。

三菱UFJフィナンシャルグループ:三菱、三和銀行の流れを汲む三菱UFJ銀行を中核とするメガバンク
世界最大の総資産を持ち、国内にも海外にも強みがあるが、内部は寄り合い所帯の面が強いとされる。

三井住友フィナンシャルグループ:住友、三井銀行の流れを汲む三井住友銀行を中核とするメガバンク
メガバンクの中では収益性が高いが、総合力や融資へのサポートが弱いとされている。

みずほフィナンシャルグループ:第一勧業、富士銀行の流れを汲むみずほ銀行を中核とするメガバンク
メガバンクの中で最大規模を誇るが、合併の際の融和が不完全で体力に乏しいとされる。

りそなホールディングス:りそな銀行と埼玉りそな銀行を中核とする大手金融グループ
野村財閥の中核銀行だった大和銀行と、戦前の日本貯蓄銀行が普通銀行化した協和銀行と地方銀行だった埼玉銀行が合併したあさひ銀行の2行が前身となっている。